深海DIARY

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【アルバム感想】『PIECE OF MY SOUL』 WANDS

WANDS 4thアルバム

1995年4月24日 リリース


PIECE OF MY SOUL

PIECE OF MY SOUL

  • アーティスト:WANDS
  • ビーグラム
Amazon

 

収録曲

01 FLOWER

02 Love & Hate

03 世界が終るまでは・・・

04 DON'T TRY SO HARD

05 Crazy Cat

06 Secret Night 〜It's My Treat〜

07 Foolish OK

08 PIECE OF MY SOUL

09 Jumpin' Jack Boy 〜Album Version〜

10 MILLION MILES AWAY

 

概要と感想

WANDS4枚目のアルバム。

上杉昇&柴崎浩在籍最後のアルバム。WANDS2期自体は本作発売以降もシングルをリリースしていたが、アルバムはリリースされなかったので、2期としては最後のオリジナルアルバムとなった。

アルバムとしては1年半ぶり。

 

ベースに渡辺直樹。ドラムに青山純を招きリズム隊を大幅に強化。M03を除いて打ち込みを極力排除したハードロック・グランジロック路線でほぼほぼ完全統一されたアルバムで、今までのWANDSサウンドとは大きく異なる作風となっている。

 

シングル曲であるM03の時点でサウンドが若干ハードになっていたが、次のシングル曲M06で一気に爆発。

 

日本のロック、というよりも90年代初めに頭角を現したグランジロックやハードロックに影響を受けたような洋楽ロック志向が躊躇に現れたアルバム。

 

シングル曲であるM03でサウンドが若干ハードになっていたが、それでもBeingっぽさが残っていた。しかし、次のシングル曲M06で一気グランジ、洋楽ロック志向が爆発し、アルバム曲もその流れを汲んだサウンドが全開。

 

ただ、後のシングル『Same Side』や『WORST CRIME 〜About a rock star who was a swindler〜』に比べると取っ付き易いメロディー、サウンド今までのポップス路線とハードロック路線の狭間で苦しんだような、WANDSというユニットの方向性が凝縮されているような音作りだと思う。

 

なので、やろうと思えばもっとポップにも出来たし、ハードなロックにも出来たのかな、といった印象を受けるアレンジを随所に感じる。

 

この印象は決して悪いわけではない。ギター&キーボードという楽器隊の編成で、ギリギリを攻めていった結果、ポップとハードのどっちつかず感が、逆にバランスが良いというか、『Same Side』からはキーボードが今まで以上に狭い隙間を埋める役割が強くなってしまったのもあって、このアルバムぐらい主張もしつつ、脇役に徹しつつ、というのが絶妙にいい塩梅なのである。

 

この辺を取りまとめた葉山たけし(M06のみ池田大介)の編曲家としての手腕はお見事、といえよう。

ただ、葉山さんっぽいBeingらしさもなく、そういった点はSound producer by WANDSが大きかったのかも。

 

M06からボーカリスト上杉昇が目指してきたロックを追求、その流れを汲んだアルバムなのもあってか、「ポップなサウンドを要求するファンと、ロックな世界への傾倒を歓迎するファンの間で賛否両論を呼ぶ問題作」と旧公式サイトで評された作品で、サウンド面に関して色々と言及される事が多いが、歌詞のメッセージ性、表現も大きく変わっており、今までの恋愛模様を絡めたラブソングなテイストから、アウトローであったり、荒廃的、破壊的、悲観的な内容が多い。

 

厭世観に基づいた吐き出されたような歌詞は、サウンド以上にWANDSというユニットのイメージを完全に覆した。このアルバムで注目すべき点はサウンドの変貌以上に、この厭世な歌詞なのではないか。

 

ある種、WANDSという環境だからこそ書けた、ダイレクトすぎる歌詞は、WANDSのボーカリスト上杉昇にとっては濁ったものだったのかもしれない。しかし、皮肉にも、音楽性の狭間で苦悩し書かれた詞は、リリースから幾年月経っても色褪せず、輝いている。

 

Pickup Songs

01 FLOWER

『PIECE OF MY SOUL』のオープニングナンバー。

イントロの暗いギターのアルペジオが、アルバムの作風を一気に伝えてくる楽曲で、オープニングナンバーからダークなサウンド。

 

ギターサウンドもそうだが、サビではディストーション・ヴォイスで歌われたり「PUNK ROCKを聴いては Milkを飲む老婆」という出だしの歌詞など、WANDSに対する「違和感」というべきか、今までのWANDSとは一味も二味も違う印象を嫌でも感じさせてくれる。

 

曲のテイストで言うとNIRVANA「COME AS YOU ARE」っぽい仕上がり。

丸々「COME AS YOU ARE」という訳ではないが、ギターの雰囲気(アルペジオとか)や構成は通ずるものがあると思う。

カム・アズ・ユー・アー

カム・アズ・ユー・アー

  • ニルヴァーナ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Nirvana - Come As You Are (Official Music Video) - YouTube

 

グランジロックをどう表現していくか、それをどう日本の音楽界にアピールするか、そういった挑戦的な雰囲気もある。

 

「僕をごらん そして いくらでも 笑いとばして」

と歌って終わっていく様は非常にリリカルだ。

ライブではもっと激しく演奏されていて、カッコいい。

02 Love & Hate

ポップとハードの絶妙な融合を果たしたような、パンチの効いた楽曲。

 

木村さんのキーボードがギター、そしてベース、ドラムと上手いこと混じって曲の明るさを彩っている。

「ポップスをやりたかった」と5期の際、インタビュー(Real Soundにて)で当時の心境を吐露していた木村さんだが、その妥協点がこの辺だったのかな、と勝手に思ったりもする。

 

サウンド自体はポップな方だが、歌詞は痛ましい。

今までのWANDSでJ-POPらしく、やんわりと包み込んだような歌詞の真逆をいくような、苦悩と孤独を反映した歌詞はなんとも言えない気持ちになる。

 

「誰も永遠に 自分自身に 出会えないから 当たり前なんだけど」

って心理にたどり着いてしまった悲惨さが、ただひたすらに無常だ。

03 世界が終るまでは・・・

曲の感想はシングル感想を参照。

04 DON'T TRY SO HARD

切なく奏でられるアコースティックギターが暗く淋しい、憂鬱な感じにさせるアコースティックバラード。

内省的な歌詞にものすごく暗くて陰湿なサウンドなんだけど、泣けてくる不思議な曲。

 

「悲しいから泣くのではない、泣くから悲しいのだ(ジェームズ=ランゲ説)」っていうのを表したような1曲。

 

ちなみに、長門プロデューサーの提案により(ベスト盤へ)収録が決まった、と『at the Being Studio』のライナーノーツに書かれており、長戸氏に何か心にくるものがあったのか、異例な形でピックアップされた曲でもある。

 

また、同ライナーノーツに「当時のアメリカ・インディーズシーンの音楽要素を巧みに取り入れた曲(要約)」とあるが、この表現は少し違うようにも思う。

 

もちろん、そういった要素も取り組んでいると思うが、この曲の元ネタはStingの 「Shape of My Heart 」が要素の大半を占めているのではないだろうか。

シェイプ・オブ・マイ・ハート

シェイプ・オブ・マイ・ハート

  • スティング
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Sting - Shape of My Heart (Official Music Video)  - YouTube

アコギの演奏は正直まんま(音が少なくなっているが)。

 

「Shape of My Heart 」が収録された『Ten Summoner's Tales』は93年リリースで『PIECE OF MY SOUL』が95年リリースと、結構早い段階で元ネタとして拝借してるなぁ、と。

「DON'T TRY SO HARD」は柴崎さん作曲ソングでアコギの演奏も彼によるものだが、柴崎さんの中では非常に影響の受けた1曲だったのかな、と思ったり。

 

余談だが、「Shape of My Heart 」は『レオン(映画)』のエンディングテーマとして有名。映画は凄い名作なので、興味ある方はぜひ。

05 Crazy Cat

キーボードが大きくフューチャーされたミディアムナンバー。

ハードなギターが一気にサウンドを押し上げるズンズンとした曲でカッコいい。

 

ギターソロを支えるキーボードの装飾が華麗で美しい。M02と同じく、絶妙なハードとポップの間って感じで、WANDSの編成が活きた1曲だと思う。

 

歌詞の方はだいぶ堕落的、というか荒れたような恋模様。

今までの恋愛描写とはオサラバしたような荒廃した描写がシニカル。

 

イントロのキーボードといい、サビの感じと言い、曲の雰囲気はTOTO「Hold The Line」から連想したのかな(TOTO好きな柴崎さん作曲だし)と思ったりするが、どうなんだろう。

Hold the Line

Hold the Line

  • Toto
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Toto - Hold The Line (Official Video) - YouTube

06 Secret Night 〜It's My Treat〜

曲の感想はシングル感想を参照。

07 Foolish OK

「例えば 僕が消えても いつも通りに 時代は移りゆくのだろう 巡るだろう」

という自暴自棄なフレーズから始まるハードナンバー。

 

調べてみると、若者の自殺は本作がリリースされた95年前後から急激に数が増加したようで(厚労省や国の機関のデータを参照した)、そういった子どもたち(若者)の自殺について暗に歌われている楽曲で、J-POPらしいキラキラとした夢や希望で押し止めるのではなく、やるだけやって、逃げちまってもいいじゃないか、と着飾ることなく、ストレートにメッセージを表現している。そのストレートさが、逆に勇気をもらえるんじゃないだろうか。

 

後半から聴こえるTWINZERの生沢コーラスも熱い。

 

地味にアッパーのあるキーボードサウンドが極上で、それこそ木村さんのフェイバリットアーティストであるVOWWOWの厚見玲衣のような感じ。

 

実は以前はあまり印象の薄い曲だったのだが、このレビューを書くにあたり2ヵ月ぐらい前から、このアルバムをリピートしまくっていたのだが、その際に良さを再発見した1曲。

08 PIECE OF MY SOUL

上杉昇&柴崎浩という共作で作曲されたタイトルチューン。上杉さんの作曲は2回目だが、共作は初。

 

Aメロのモチーフがあり、それを気に入った上杉さんが柴崎さんを自宅に呼び制作されたという。柴崎さん曰く、「新たな作曲方法を見つけた」ということ(ラジオ番組「ミュージックスクエアより)。

 

AメロとBメロは静かでダウナーな雰囲気から、サビで一気にウネリ爆発していくヘヴィナンバー。

このダウナーでヘヴィな雰囲気は、後のal.ni.coっぽくもある。

 

聴き方を変えればプログレ的な要素もあり、タイトルチューンながらこのアルバムの中で一番難解な気もするが、一番グランジな雰囲気も漂う。

 

「少しずつ 消えるくらいなら ひと思いに散ればいい?」というフレーズはおそらくNIRVANAのボーカリスト、カート・コバーンの遺書を引用したものと思われる。

原文は「It’s better to burn out than to fade away」でカート・コバーン自身もニール・ヤングの「Hey Hey, My My」の歌詞引用していると言われているが、上杉さんもそれを意識して引用したのか、たまたま似たようなフレーズが浮かんだのか・・・。

09 Jumpin' Jack Boy 〜Album Version〜

曲の感想はシングル感想を参照。

 

サウンドの統一に合わせてか、大幅にアレンジが変更されており、生音重視のロックナンバーへと豹変した。ベースがブイブイ鳴っている。ギターソロも派手に変わった。

そして、シングルVer.と違い、キーボードが奥に遠ざかってしまったのは、この時期のWANDSを象徴しているような気も。

 

元々のサウンドが明るめだった+歌詞も従来のWANDSイメージな曲なのもあって、正直、アレンジをだいぶ変更したとはいえ、だいぶ浮いてしまっているような気がしてしまう・・・。

 

特に緩急のあったM08と、儚いM10の間でこの明るいイケイケな歌詞とサウンドは、橋渡しとするには無理があったように筆者は感じてしまう。

アルバム前半に配置するか、「KEEP ON DREAM」や「太陽のため息」の方が合ってたのかなって。

シングル曲なのでセールス的な戦略で収録という流れだったのかもしれないが。

 

ただ、サウンド統一の為に大胆にアレンジを変更したのは面白いし、聴き応えもある。

 

10 MILLION MILES AWAY

上杉&柴崎(2期)時代唯一の木村真也作曲

 

『PIECE OF MY SOUL』の最後を飾るにふさわしいドラマチックな名曲

 

ハードテイストなナンバーが並ぶアルバム後半の聴き疲れを癒すような澄んだ静けさを感じさせる1番と、バンドサウンドが発揮される2番という構成が素晴らしい。

 

そして、ギターソロの後に、ピアノソロが組み込まれ上杉さんのボーカルが。次に柴崎さんのギターが入り、最後に全員の音が揃って終わるという、2期WANDSの一体感を大いに感じる1曲だったのだが、こういったサウンドとバランスが、このメンバーで長続きしなかったという残念さも後々感じさせてしまうという、色々な感情が浮かんでくる1曲だと思う。

木村さんの難しい立場が表れてもいたのかなって。

 

歌詞は夢追い人の決意を歌ったような内容で「粉々に砕けたガラスのようだ」と繰り返されるフレーズに加え、夢を追っていくと、周りが傷ついていくから、と孤独に進んでいかなければならないという沈痛でノスタルジアな思いと、意思の強さとが交差している。

 

3期・5期においてカバーされたことで、WANDSの楽曲の中で唯一、歴代ボーカリストが歌った1曲となった。

 

詞にあるような、どんなことがあっても歌っていく、という志と決意は、和久治郎・上原大史という、ボーカルが変わる宿命を背負った両名にも受け継がれる内容だったのかな、と、個人的には思ったりもする。

 

アルバムの最後に織田哲郎でも栗林誠一郎でも柴崎浩でもない、木村真也作曲で最後を締めるというのが胸を熱くする。

まさか、その後にWANDSのメンバーとして作曲のみならず、作詞まで担当するとは。

木村真也此処に在り、と存在感を示した1曲。