WANDS 1stベストアルバム
1996年3月16日 リリース
『SINGLES COLLECTION+6』
収録曲
01 天使になんてなれなかった
02 時の扉
03 もっと強く抱きしめたなら
04 恋せよ乙女 〜Remix〜
05 世界中の誰よりきっと 〜Album version〜
06 Just a Lonely Boy
07 ありふれた言葉で
08 白く染まれ
09 ふりむいて抱きしめて
10 寂しさは秋の色
11 星のない空の下で
12 Jumpin' Jack Boy
13 愛を語るより口づけをかわそう
14 世界が終るまでは…
概要と感想
WANDS1枚目のベストアルバム。厳密にはこのアルバムがWANDS2期最後のアルバムとなった。
以前は5thアルバムとナンバリングされていたが、今では1stベストという扱いを受けている。
旧公式サイトでは「WANDSのそれまでの軌跡と記録の集大成ともいうべきベスト・アルバム」「変化するWANDSサウンドの中で、一つの区切り的作品」と評された。
「Secret Night 〜It's My Treat〜」、「Same Side」、「WORST CRIME〜About a rock star who was a swindler〜」を除く歴代シングルを総まとめ(厳密にはバージョン違いあり)。
更にM01・M04・M05・M07・M08・M11 が+6として収録。
M04・M08はこのベストアルバムでしか聴けない未発表曲と充実した1stベストアルバム。
初回盤はスリーブケース仕様でフォトブック付き。
ブックレットにはレコーディングした日付とミックスした日付が記載されている。
こうやってシングルを並べて聴くと、Beingプロデュースによる圧巻のポップロックが並ぶ。
Beingのクリエイター達による提供曲も力が入っているし、アレンジ面でもツボを的確に押さえており、会社ぐるみで制作してきた環境もあってか統一感があって全てが聴きやすい。
+6についても、未発表曲とアルバム曲、アルバム未収録のカップリング曲を適度に選曲したな、といった印象で、これらを聴くことで「アルバムも聴いてみようかな」「シングル集めてみるか」と意欲が沸いてくる、いい意味で完結させない、ベストで終わらせないベストアルバムだったんだろうな、と思う。当時においては。
一方で、WANDS(主に2期)のセールス全盛期を1枚で抑えられる手ごろなベストアルバムではあるが、POP路線の時代のみをまとめており、生音にこだわり始めたハードロック路線のシングルがスルーされているので、今となってはWANDS全体としては中途半端な位置にあるアルバム。
セールス的な成功はポップ路線だったのもあり、「Secret Night 〜It's My Treat〜」以降のシングルや『PIECE OF MY SOUL』のアルバム曲を未収録にしたのも理解できなくもない(単に最新アルバムだから購入させる為に未収録にしただけかもしれないが)。
逆に、生音ロック路線が収録されていないことが、ベストアルバム全体の聴きやすさを増強させていたのかな、と。
Pickup Songs
02 時の扉
曲の感想はシングル感想を参照。
表記無しだが、このベストではフェードアウトせずに曲が終わる。
5期のセルフカバーにおいてもフェードアウトするので、フェードアウトしない「時の扉」は現状、このベストアルバムでしか聴けない。
04 恋せよ乙女 〜Remix〜
「恋せよ乙女」のリミックスバージョン。
シングルVer.はベースラインなど、全体的にアクが強く「時の扉」の二番煎じな印象を強く感じてしまったが、このリミックスはそのアクの強さや二番煎じ感が排除されている印象を受け好印象。
全体的に激しめの演奏となっており、ギター、キーボード共に主張が強くなった。
アウトロではオリジナルにはなかった激しめのギターソロも追加。
地味にこのギターソロ、ただ激しい&速弾きだけでなく、バックでエレキに合わせたアコギは大きなポイント。
ベースとのユニゾンといい、このアウトロギターソロは力が入ってる。
93年7月にレコーディング&ミックスと歌詞カードに記載されている。シングルが97年7月に発売されている為、少し遅れてレコーディングしていたのかも。
『Little Bit・・・』にはこのリミックスVer.を収録予定だったが、柴崎さんが腱鞘炎になり、お蔵入りとなった、とネット上では通説になっているが、真偽は不明。もしかしたら当時のFC会報に載っていたのかもしれない。
08 白く染まれ
本作最大のセールスポイントな未発表曲。
川島だりあ作曲によるダークなポップロックナンバー。
ブックレットの情報から94年9月にレコーディング。96年2月9日にミックスが行われることが確認できる。
本作で一番最新のシングルであるM14が94年3月にレコーディング&ミックスとなっている為、「白く染まれ」はそれ以降に制作されていたことが分かる。
そんでもって、ベストアルバム発売1ヶ月前にミックスされており、一度お蔵入りになっていたものを、ベスト発売に合わせてミックスしたのかな、と。
発売の段階で「WORST CRIME〜About a rock star who was a swindler〜」といった生音のグランジロック路線だったが、この曲はM14の延長線にあるような打ち込みロック。
『PIECE OF MY SOUL』というより『Little Bit・・・』な作風で、打ち込みとはいえ、ハードさが際立ち、スリリングでダークさも強い1曲。
「白く染まれ 犯した罪よ かかえきれない こんな夜には」
というサビを始め、歌詞はかなりダークな雰囲気を匂わせ、今までもダークな歌詞はチラホラあったが、究極の愛を歌った「世界が終わるまでは・・・」やノリノリな「Just a Lonely Boy」の後に制作された曲と考えると非常にダイレクトにダークさを演出されたと感じる。
WANDSに提供された川島だりあ作曲ソングはどれも暗さがあったが、上杉&川島コンビは実は中々通じ合うところがあったのかな、と密かに思ったりもする。だりあさんもハードロックに精通していた人だし。結果的に、川島だりあさんのアプローチで上杉さんと共演したりもしたが。
上述しているが、打ち込みのポップ路線をまとめたベストだったからこそ、違和感なく聴けたのかな、と思う。そういう意味では収録のタイミングは絶妙だった。
94年に「世界が終わるまでは・・・」でハードロックさを増し、95年に一気にサウンドを生のバンドサウンドへと変貌させたWANDSだが、この曲のようにワンクッション置けば、当時のファンにも余裕が生まれたのかな、と後になってから思ったりもするが。
そもそもシングル曲として制作されていたのか、アルバム用の曲だったのか・・・。
ミックスも、時期が違えば曲の印象が全然変わるような楽曲だったのだろうか。
『Little Bit・・・』の記事にも書いたが、こういう打ち込みロック路線のアルバムをもう1枚くらい聴いてみたいと思える楽曲だった。