WANDS 2ndベストアルバム
1997年11月6日リリース
収録曲
01 寂しさは秋の色 ★
02 ふりむいて抱きしめて
03 もっと強く抱きしめたなら ★
04 世界中の誰よりきっと~Album Version~
05 時の扉 ★
06 愛を語るより口づけをかわそう ★
07 恋せよ乙女
08 世界が終るまでは…
09 Secret Night~It's My Treat~ ▲(?)
10 Same Side ★
11 WORST CRIME~About a rock star who was a swindler~ ▲
12 錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう
13 Try Again
14 MILLION MILES AWAY (3期によるセルフカバー)
★→ライナーノーツにリミックスと記載されているもの。
▲(→ライナーノーツにリミックスと記載無し。だが野村昌之がミックスを担当しており、リミックスの可能性があるもの(M11に関しては、確実にしている)。
概要と感想
WANDS2枚目のベストアルバム。
以前は『SINGLES COLLECTION+6』を5th アルバムとしてナンバリングしていた為、1st BESTとなっていたが、5期による再始動にともない『SINGLES COLLECTION+6』が1st BESTに。よって今は2nd BESTとなっている。
ライナーノーツ付き。
前作から1年半開けてアルバムに関しては連続でベスト形式となり、ベストとはいえ3期の作品が初めてアルバムという形で収録された。
シングル曲を順に収録してるが、「Jumpin' Jack Boy」は未収録。
旧公式サイトでは「WANDSの統括的役割を果たした」と評されている。
本作最大の特徴として、一部の曲にリミックスがされていることにある。
ライナーノーツにリミックスの詳細が語られているが、このライナーノーツがどうも情報不足な点があり、明らかに書かれていること以上のリミックス(変更点)があったり、リミックスと書かれていないけど明らかにリミックスされていたりする。
ライナーノーツとクレジットを照らし合わせてみると、野村昌之がミックスを担当しているものがリミックスされていると推測ができ、彼がミックスしているのはM1・M3・M5・M6・M9・M10・M11の計7曲。
だがライナーノーツにリミックスと記載があるのはM1・M3・M5・M6・M10の計5曲。
M9に関しては「シングル・バージョンと同テイク」とあり、M11は記載なし。
リミックスについては後述で触れたい。
ライナーノーツを除けば公式でどの曲がリミックスされているか示されていないのでWikipediaやAmazonや個人ブログのレビューなどでこの曲はリミックス、という注釈に多少の誤差がある。
5年10年前の音楽レビューサイトやブログが多くあった頃は、後述するリミックスや上杉・柴崎両名による脱退劇、3期に対する風当たりが強い時期なのもあって非常に酷評されていたとされる1枚。
ファンクラブの会報では「一度全14曲を通して聴いてみてください。自然とWANDSの音楽が心に入ってくる(中略)WANDSとして新たなスタートを切るために、今までの軌跡を辿ったこの作品の意義」とあり、Bingサイドとしては、3期の曲も混合させることで、メンバーが変わってもWANDSサウンドはWANDSサウンド、とリスナーに広く知らせる思いがあったのかな、とか思ったりもする。
そういう意味ではベストアルバムというのは絶好の機会(媒体)で、でもベスト盤連続リリースだから、一部はリミックスしました・・・みたいな憶測も考えたり。
むしろ中途半端にリミックスして上杉・和久を混合せずに3期で収録曲全部セルフカバーとかした方が良かったのだろうか。LOUDNESSの『ON THE PROWL』やCRAZEの『THE GROTESQUE HITS』のような。
もしくはM14を除いて全てリミックスとか。
本作に関しては、否定的な意見が多く、問題作扱いされることも多い。
かく言う筆者も10年程前、当時中学生辺りからWANDSを聴き始め、当時は音楽レビューブログ等は貴重な情報源であり、サイト横断していたのだが、このアルバムがどのサイトでも酷評されているので、聴く前から怖いもの見たさ、というかよっぽどのアルバムなんだろうなぁ、と事前に印象を持っていた。
が、いざ聴くと後追い故かリミックスに関しては抵抗がなく、非常に好印象だった為、WANDSベストではお気に入りの1枚。
リミックスに関しては、「嫌がらせ」と評されることが多い印象だが、細かい部分まで聴くと、丁寧なリミックスがなされていると思う。というか、あまり細かい部分まで言及されていないように思う。
そもそも問題作扱いされる原因の大まかな理由は、上杉昇&柴崎浩の脱退劇、それに伴うBeingの対応、そして、ボーカリスト(とギタリスト)が変わったのにWANDSという名前だった、セルフカバーを行った、といったものなんだろうけど、3期WANDS始動を知らせるファンクラブの会報なんかを読むと、泥沼な状況下だったという訳でも、「嫌がらせ」目的でもなく、WANDSサイドとしては、ただ単純に「過去(1期)から今(3期)の軌跡を辿るためのアルバム」だったのかな、と。
ファンクラブのメンバーコメントや後のBeing主導によるライナーノーツなんかを読むに、正直、WANDSに関しては少なくとも大黒摩季・ビーイングスタッフなんかとは違ってゴタゴタしてるわけでもないように思えるし・・・(この件に関しは真相不明だが)。
まぁ、Beingに関しては音楽という媒体においてはどんな状況でも高水準の素晴らしいものを届けていた、そう思うし、本作のリミックスも他意のないもの、そうであると信じたい。
なにより野村昌之はLOUDNESSの爆音伝説を作り上げたり、B'zを手掛けた熟練のエンジニアだし。
三期の『AWAKE』は近年再評価の風潮が強いが、本作も再評価されていっても良いと思う。
一度、問題作、という評価を取っ払って、細かいところまで聴くと、面白いアルバムなんじゃないだろうか。
Pickup Songs
ライナーノーツに記載のある箇所から、記載がないけど明らかに変わってるよね?って部分まで書いてみる。
01 寂しさは秋の色
リミックスでの収録。
曲の感想はシングル感想を参照。
主な変更箇所
○リバーブサウンドが抑えられている。
○ドラムの音を強くした(ストレートな音にした)。
○エレキギターの演奏が左右にセパレートされている。
○キーボードが左寄りで鳴るようになっている。
原曲は91年に発売したとはいえ既に時代性のある80年代風な、トレンディーなリバーブサウンドがあったが、それを抑え、ドラムをストレートな音にしたり、湿っぽい雰囲気を薄めたりと立体的にリミックス。J-POP感らしい、90年代風の音になったと感じる。
更に、ライナーノーツには書いていないが、ギターの演奏が左右にセパレートされており、アルペジオなど、サイドギターとリードギターとが分かれて聴きやすい。
同時にキーボードも左チャンネル寄りで鳴るように調整(かすかに右側でもなっている)されており、オリジナル版は真ん中に音が集中しすぎていて、ボーカルのノッペリした感じも相まって、窮屈且つ硬い感じだったが、音をバラけさせてスッキリ。
派手になった、と評されることが多いが、それ以外にも細かい調整があり、その辺は巧いこと再調整したな、といった印象で、オリジナル版のリマスタリング音源と比べても、全然違ったミックスをしていることが聴いていてわかると思う。
03 もっと強く抱きしめたなら
リミックスでの収録。
曲の感想はシングル感想を参照。
嫌がらせ、と一部リスナーから言われた大胆なリミックスが特徴。
間奏(ブリッジ)部分のギターフレーズを大胆にカットしたことが、「嫌がらせ」とクローズアップされることが多く、リミックスの指摘もその部分ばかり言われる(書かれる)が、実はそれ以外にもリミックス箇所(と思われる)が多いことは全くといっていいほど、指摘されていない。
主な変更箇所
○間奏部分やアウトロにあるエレキギターのフレーズ(ジャ~ララ~っていう)を大胆にカット。
○2番Aメロ部分にオリジナル(シングルVer.)にはなかった(アルバムVer.には(演奏違い)で存在する)エレキギターを追加(「かけがいのないもの~♪」の箇所)。
○エレキギターの演奏を左チャンネル寄りに変更(オリジナルは中央だった)。ソロやジャ~ララ~は変わらず中央。
○全編においてアコースティックギターの音を前に出した(オリジナルよりも強調した)。
○ホルンやベルのリバーブを抑えてクッキリさせた。
○イントロやアウトロ部分におけるキーボードを強調した(タラタラタラ・・・って音)。
○全編においてキーボードをガッシリとした。
○ドラムをストレートな音にした。
このように、実は多くの変更(リミックス)箇所がある。
「嫌がらせ」とギターカット部分ばかり指摘され、マイナスなレビューばかりだが、筆者としては、肯定的に感じるリミックス。
アコースティックギターを目立つようにしたり、キーボードをガッシリさせたリミックスはオリジナル以上に音に跳ね、臨場感がある。
「もっと強く~」って、スマートで透き通った綺麗なサウンドだったんだな、と感じさせるリミックス。
というか、このリミックスを聴いた後に、オリジナルを聴くと、音を集中させすぎて、細かい音が相殺し合っているようで勿体なく感じる・・・。
また、筆者はベルの鳴る感じとか、歌いだしの「この街に冷たい風が吹く」なのもあってウィンターソングな雰囲気を感じて、その切なさも良い雰囲気かな、と(詩の中では雪ではなく雨が降っているが)。
このリミックスが一番好きで秋や冬になると脳裏によく浮かぶ。
05 時の扉
リミックスでの収録。
曲の感想はシングル感想を参照。
主な変更箇所
○ギターを左右にセパレートさせた。
○全編でドラムの音(アタック)を変更。
○更にギターソロ後のドラム処理も変更。
○アウトロのフェードアウト部分でボーカルにディレイがかかっている(「時の扉 叩いて~♪(いて~♪)」といった感じ)
左右にギターの音がセパレートされていたり、ドラムのアタックが強くなっていることにより、ダンサンブルな雰囲気からデジタルロック度が増したと思う。
ギターソロ後のドラムが固い感じに音色が変わる部分が痺れるし、アウトロのフェードアウトする箇所で上杉のボーカルがディレイするようになっているのもフェードアウトで味わえる曲が終わっていく余韻をさらに感じさせる。
原曲より激しいサウンドになっていて好きなミックス。
原曲を聴いて、ビョンビョンしててなんか足りないなぁ、と痒い所に手が届かない印象があったが、このリミックスで手が届くようになった。
06 愛を語るより口づけをかわそう
リミックスでの収録。
曲の感想はシングル感想を参照。
主な変更箇所
○ドラムアタックを変更(強めた)。
○キーボードの音をガッシリさせた。
○キーボードを左チャンネル寄りで鳴るように調整。
○エレキギターの演奏を左右にセパレートさせた(ギターソロは中央)。
ドラムのアタックが強まった他に、サビなど全体的にキーボードがオリジナルより聴こえるように。
エレキギターも柔らかく、左右にセパレートされているが、オリジナルの中央に寄せているミックスよりも広がりを感じ、オリジナルにあった湿っぽさ、硬さがなくなり、疾走感が出たリミックスだと思う。
09 Secret Night~It's My Treat~
野村昌之がミックスを担当している曲。
本作は野村昌之がミックスしている曲がリミックスされている、という法則に当てはめれば、この曲も対象だがライナーノーツにはリミックスの表記がなく「シングル・バージョンと同テイク」と記載がある。
じゃあアルバムのはバージョン違うの?って話だが。
筆者はシングル・アルバム・本作とで聴き比べしたがリミックス箇所は不明で、リミックスされているかどうかも不明(もしリミックスされていたら情報求む)。
10 Same Side
リミックスでの収録。嫌がらせ、と評されることの多いリミックスその2。
曲の感想はシングル感想を参照。
主な変更箇所
○アコースティックギターの音を大きく(より生っぽく)させた(最新リマスタリング音源(『complete of WANDS at the BEING studio』)よりも大きい)。
○キーボードがオリジナルよりも目立つように変更。右チャンネルで鳴るように調整。
○2番Aメロ後半やBメロ(1番2番共通)でオリジナルには無かった(聴こえなかった?)キーボードが右チャンネルに追加された。
○サビ部分においてもキーボードが右チャンネルで鳴るように調整(オリジナルでは一瞬、左チャンネルで聴こえる程度、といった具合に聴き辛かった)。
○2番以降のサビ後半にある「Same Side~ Same Side~♪」って箇所のキーボード音(フィン!フィン!って叩き付けたように鳴らす音)を小さくした。
○「Same Side~ Same Side~♪」って箇所のエレキギターの演奏(リフ)を右チャンネルで鳴るように調整。
○ギターソロの箇所も左右にセパレート。
○エレキギターをオリジナルよりも重厚な音に変更。
○ドラムの音を変更。渇いた感じの音になった。
○サビにおけるドラムの主張を弱めた。
サビの爆音サウンドを抑えた、として「嫌がらせ」と評されることの多いリミックス。
だが、この「爆音サウンドを抑えた」という表現は、筆者は違うように感じる。
抑えた、と感じるのは、恐らく、ドラムが引っ込んだ、とわかりやすく聴こえるのが原因なのではないだろうか。
実際は「抑えた」というより重厚に、ヘヴィになっていると思う。
エレキギターがオリジナルは明るめな音だったのに対し、重厚に荒々しく鳴るようにリミックスされており、リミックスでドラムが引っ込んだことにより、オリジナルではかき消されていた明石昌夫のベースが前に出るようになったからだ。
オリジナルではドラム、ギターが明るめ(高音でキンキン)になっていたのが、リミックス効果で重厚に、ベースも主張させて暗め(低音でボワボワ)しているが、この暗さが「抑えた」と勘違いされているのかな、と思う。
上杉さんのボーカルの音量が絞られているわけでもないし。
スマホのスピーカーやイヤホンではなくヘッドフォンや普通のスピーカーの聴くと、より分かると思う。
また、オリジナルでは間奏前とラストサビの「Same Side~ Same Side~♪」って掛け声の箇所ぐらいしか聴こえなったキーボードを右チャンネルで鳴るように調整して全編においてキーボードが聴こえるようにリミックスしているのも大きなポイントだ。
オリジナルにあったフィン!フィン!って叩きつけるような決め打ち部分はギターに飲み込まれているんだけど、逆にそこに違和感があった(そこだけ従来のポップなキーボードサウンドが聴こえていた)ので、マイナスな印象もない。
野村昌之によるこの曲のリミックスは、蚊帳の外だったキーボードを、劇的に復活させた、それでいてオリジナルの爆音感、荒々しさを残した名リミックスだと思う。
WANDSという、ギター&キーボードな楽器編成においては、このリミックスが一番あるべき姿だったのではないだろうか。
11 WORST CRIME~About a rock star who was a swindler~
ライナーノーツにリミックスの記載がないが、明らかに変わっている。
曲の感想はシングル感想を参照。
主な変更箇所
○エレキギターの演奏を左右にセパレート。
○エレキギターを重厚(ヘヴィ)にした。
○ドラムの音を変更。より渇いて響きが効いた感じに。
○間奏部分のキーボードの鳴り方を変更。
パパパパ~パパパパ~って部分から、ギターソロのバックで鳴る部分のキーボードが左右にユラユラと動くようになった。ついで、キーボードが大きくなった。
○ベースの主張を弱めた。
ライナーノーツに一切記載がないが、上記のようにリミックス箇所がある。
筆者としては、これまた好印象なリミックス。
オリジナルは、ギターの演奏がカッコいいのに、そこまでガツンとしないミックスや、前作(Same Side)に続いて影の薄いキーボード。
そして、前作(Same Side)で爆音サウンドになりつつも、本作はそれを若干抑えたような平べったいミックス・・・。と、正直、それぞれの思惑、つまりは上杉昇&柴崎浩さんらやBeingの思惑が交差したような、チグハグな雰囲気さえも感じたミックスだったが、このリミックスはそれらを全て吹き飛ばした。
まず、ギターがかなり重厚になった。セパレートされたことにより、サビ前やアウトロのギターが左右で演奏が重なることで、凶悪なほどに重厚、ヘヴィになる。重い。
ガンガンになるので、アウトロではオリジナルでは目立っていたベースを飲み込み、独壇場な演奏を聴かせてくれる。
オリジナルではパパパパ~パパパパ~って間奏の部分ぐらいしか見せ場のなかったキーボードだが、リミックス効果により、ギターソロの後ろでの演奏が聴こえるようになったし、なによりユラユラと動くようになったのが、この頃のWANDSらしいダークさ、怪しさを演出させて良い。
これまたWANDSというギター&キーボードの編成を活かした名リミックスだと思う。
なお、ライナーノーツには「明石昌夫(b)が参加」と誤植されている。渡辺直樹が正解。
だが、歌詞カードのクレジットには「 Naoki Watanabe(#11)」と正確な情報が記載されている。
14 MILLION MILES AWAY
3期による唯一のセルフカバー。
曲の感想に関してはアルバム感想を参照。
3期によるセルフカバー。
5期でもセルフカバーされたことで、現状唯一歴代ボーカリストが歌っている曲になっている。
編曲がWANDS名義になり、生音から打ち込みに変更。
ただ、「Try Again」でも感じたのだが、この頃の3期は手探り状態だったのかな、と思う。淡泊な打ち込みは3期WANDSサウンドの中では地味でパワーの弱さも感じる。
「Brand New Love」以降の編曲WANDSとは音作りが違うし、ファンクラブの会報を読んでも、従来のWANDSサウンド継承に力を入れていた頃だったのかな、と。
そういう意味で、もっと後に編曲していれば、もっとクールな打ち込みにできていたのかなぁと思ってしまう。
また、編曲WANDSながら木村さん最大の見せ場でもあるキーボードソロがカットされたがこれもまた、木村さんによる今迄のWANDSサウンド、という一つの解釈だったのかもしれない。
思えば、そもそもこの「MILLION MILES AWAY」のサウンド、アレンジは木村さんのやりたかったポップス路線から外れた時期の1曲だし。
ギターソロはハードに、メタルチックに激しくなっていてカッコいい。ギタリスト杉元一生此処に在りといった感じ。テクニカルで速弾きという、スティーブ・ヴァイをフェイバリットギタリストとしている杉元さんらしいギターソロだ。
また、この3期版「MILLION MILES AWAY」にはPV(MV)も存在していたようで(未商品化)、1997年10月ごろに「うたばん」のアルバムランキング1位の際に流れていたようだ。
セルフカバーということもあり、PVを作るぐらいにはリード曲扱いだったのだろうか。
ボーカリストとして歌い続けること、の意義を問いただす歌詞は、奇しくも、相当なプレッシャーの中、2代目ボーカリストとして歌うことを決意した和久さんにとっても相応しい楽曲だったようにも思う。
3期にとってもマスターピースな1曲。いや、歴代ボーカリストに歌われたこともあり、WANDSにとってマスターピースな1曲かもしれない。