深海DIARY

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【シングル感想】『Brand New Love』 WANDS

WANDS 13thシングル

1998年2月11日 リリース

Brand New Love

Brand New Love

  • アーティスト:WANDS
  • ビーグラム
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概要

WANDS13枚目のシングル。

第三期WANDSとしては2枚目のシングルとなる。

 

WANDSとしては2ndシングル以来のオリコントップ10を逃した

 

3期メンバーのビジュアルが初めてジャケットに登場。

和久さんはラジオ番組においてサングラスをかけていることが多いのは「照れ隠し」と語っており、また会報においてもジャケット撮影やプロモーション撮影が緊張すると答えている。

その影響もあってか和久さんは今作以降のシングル盤、全てにサングラス着用でジャケットに登場している。MVでもサングラスをかけていることが多く、MVで一番素顔が拝めたのは最初の『錆びついた~』かもしれない。

01 Brand New Love

作詞坂井泉水

作曲綿貫正顕という布陣で制作された。編曲はWANDS。

 

ZARDの坂井泉水とは『果てしない夢を』(ZYYG,REV,ZARD & WANDS featuring 長嶋茂雄)でWANDSと共演(作詞を上杉昇と共作も)を果たしたことがあるが、WANDS関連に名前が出るのは、それ以来のこと。

坂井さんは作詞の他に、冒頭のウィスパーボイスとしても参加している。

 

綿貫正顕は90年代後半からBeingで新たに台頭してきたクリエイターの一人で、ZARDや愛内里菜、FIELD OF VIEWに曲を提供するなどしていた人物。

3期WANDSと綿貫正顕の縁は深く、後に松元治郎(和久二郎)の1st Liveに参加した他、アルバムに3期WANDS時代に制作され、お蔵入りとなっていた曲が採用されるなど、共演はWANDS解体後も続いた。

 

旧公式サイトでは「シンプルなロック・サウンドに数種類のサンプリング音やスクラッチ、ラップのアレンジを施すことによって、今までにない程、ドライブ感溢れるスペイシーな作品に仕上がっている。」と評されている。

 

前作では新制WANDSとして、黄金期であったポップ路線への回帰を意識したような安定の1曲だったが、今作は新たなるWANDSとして、過去に捉われず、新しい可能性を見出したような1曲。

 

1期、2期の頃とは違った形でギター&キーボードの共存をカタチにしたような音作りでギター&キーボードの編成を最大限に活かしたアグレッシブで且つスリリングさを兼ね備えたロックナンバー。

 

随所で鳴るスクラッチを始め、多くのコーラスやラップなど、今まで以上に細部のサウンドメイキングに力が入っている印象を持つが、木村さんがアレンジを練りに練っていたようで、「一時期は10人位でバンドやってるような感じ」にまでなっていたようだ。

色々なアレンジをした為、中々完成にたどり着かなかった、とも答えている。

 

編曲名義はWANDSだが、木村さん主導でかなり、最初のアレンジから試行錯誤していった(最初は切ない曲調だった模様)という経緯から、アレンジャーとしての木村さんも何気に凄いのでは?と思ったり。3期になって作詞・作曲・編曲とあらゆる面で頭角を表している。

 

ラップではSO-Fiから大島こうすけ・佐々木美和が参加しており、これにより、大島さんは現状、WANDS全ての時期で、何かしらの形で名前が出る(1期はメンバー。2期は作曲。3期はラップ。4期はメンバー。5期は作曲)という偉業を成し遂げている。

 

セールス面で苦戦していたからか、ベストアルバムに収録されることがなく、筆者はアルバム『AWAKE』で初めて聴くことになったが、圧倒的な完成度に驚かされた1曲で、素直にカッコいいと感じた。WANDSの中では5本の指に入る。

 

特に間奏のギターとキーボードの掛け合いがお気に入り。ギターの後を追うキーボードなど、聴きどころが満載。

欲を言えば、もっとギターの音を目立たせてもよかったかな、と。

 

坂井泉水による文学的で哲学的な歌詞も圧巻だ。

 

「心と体には いくつもの翼がある どんなに愛しくても ウソに向かって飛んでゆく」

と悲哀に満ちたような、冷たく鋭い歌詞は鮮烈。

 

最後には「Brand New Love たよりない愛だけど 振り返るのは もうやめよう これから出会う誰かのために 激しいリズム 刻んで  走り出せ」

と辛うじて前向きに進んでいく内容は、ある種「時の扉」的な、ダメージを負いながらも進んでいく、重い決意を感じさせる。

 

坂井さんだからこそ表現できる、唯一無二の世界を感じられる詞だろう。

 

「アルコールは偉大なる文学者の言葉よりスバラシイ どんなにかくしていても酔うと本性が現われる」

というフレーズが登場するが、これにより、1期から3期いずれの時期も「アルコール」という単語が歌詞に採用されている。地味にトリビア。

 

「他人の中傷は 鋭いナイフよりも深く 傷ついたまま 心凍らせる Right or wrong?」

「油断できない世紀末 そういう時代を逆手にとろう」

といった結果的に逆風が吹いた3期WANDSを表したかのような表現もあるが、ネット上の誹謗中傷が当たり前な今の世の中を、坂井さんは、生きていたらどう感じ、表現したのだろうか。

 

作詞した坂井泉水により、ZARDとしてセルフカバーもされており、こちらでは和久さんがコーラスに参加している。

Brand New Love

Brand New Love

  • ZARD
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

余談だが、某動画サイトでタイアップ先のCM「三菱自動車「ミラージュマリオン&チャレンジャーシティクルージング」」(野人こと岡野雅行が出演)の映像を確認したのだが・・・。

なんというか、この曲はハードでスリリングだから、日産の矢沢永吉が出演しているみたいなクールな車のCMを想像したら、ダイハツのDAIGOが出演するような明るめでファミリー感あるCMでイメージと全然違い、曲と合ってなくない?と思ってしまった。

 

また、このCMで流れているのはCD化された音源と違うテイクが使用されており、色々なアレンジの一つだったのかもしれない(ボーカルがCD音源よりラフ)。

 

02 Hurts Good

木村さん作詞作曲ソング。

 

木村さん曰く「第3期の僕たちの気持ちをそのまま書いたもの」とのこと。

 

前作のカップリングでは軽めの打ち込みにループ・ドラムを導入したりと過去を郷愁しつつ、実験的なサウンドを試していたような印象だったが、今回はずっしりとした打ち込みに加え、エッジの効いたギター、底から全体を支えるようなキーボードと、力強く、3期WANDSらしい音が出来上がったような1曲。

 

ただBeingらしい明るさよりも、イントロのキーボードからして、アングラな雰囲気が漂い、毒々しく、暗い。

打ち込みを失くしてバンドサウンドにしたら名古屋系のV系バンドとかがやりそうなサウンドでもある。

 

サビでは一直線なメロディーに、字数が多い歌詞が載っているのもあってか、焦りと必死さがボーカルに現れているような、クヨクヨしてる場合じゃない、といった決意のほどを感じる。

 

「何がいいのか 見えない世の中で どんな歌を歌えばいい?」

だとか

「時が痛みを忘れさせてくれる日まで ちっぽけな夢を 追いかけよう」

 

など、偶然か、「MILLION MILES AWAY」と重なったような表現が少しあり、夢に向かっていく為には痛みを伴うってことを感じていたのは、上杉さんも木村さんも同じだったのかな、と詞を読んでいると感じた。

 

上杉さんは「果てしないしがらみを一人行こう」と歌い、木村さんは「孤独の川 流れて行こう」と書いた。

その結果が、ソロ活動する上杉さん、WANDS再結成の木村さんに繋がったのだろうか。

 

また、テンポを緩めていって終わっていくのはWANDSの中では斬新な終わらせ方じゃないかと思う。

03 Brand New Love (Original Karaoke)

コーラスありのカラオケ音源。

 

ボーカルレスのカラオケ音源を聴けば尚の事、サウンドメイキングに力が入っているのが分かる。

 

なお、最後の「走りだせ~」と歌っているコーラス部分は杉元さんが担当している。杉元さんコーラスを聴きたいなら是非。