深海DIARY

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【シングル感想】『「今日、ナニカノハズミデ生きている」』 WANDS

WANDS 15thシングル

1999年3月31日 リリース

 

概要

WANDS15枚目のシングル。

第三期WANDSとしては4枚目。そして、結果的にWANDS解体前のラストシングルとなった。

 

後述するが、後に和久二郎(松元治郎)がインタビューにて4枚目のシングルと曲名は出していないものの、『他にいい曲があるのに、なんでこの曲なんだろう』とメンバー3人が思っていたことを明かしている。

01 「今日、ナニカノハズミデ生きている」

作詞はGARNET CROWのAZUKI七。作曲はrumania montevideoの三好誠という、共に本シングルが発売された99年からCDをリリースし始めた、Beingの2000年代GIZA期を支えた次世代のBeingクリエイターから提供を受けた表題曲。

 

旧公式サイトでは「doorsの名曲「ハートに火をつけて」を彷彿させるオルガンのフレーズ、シンプルさとハードさを追及したエッジのきいたギター、力強くからみついてくるヴォーカル、その一つ一つがWANDSの新境地を感じさせる意欲作に仕上がった。」

と評された。

 

メロディーが地を這うように重く、その重いメロディーをハードなギターが引っ張るようなダウナーでドロドロとした1曲。

 

全体の演奏がド派手でハードだがシンプルなものが続き、無機質さと同時に狂気さをも感じさせ、ボーカルもどこか陰を背負い、冷たく、だが吹き出るような熱さも感じさせ、色々と混沌としたヘヴィでサイケデリックなサウンドは唯一無二の仕上がり。

 

会報でもシンプルさとハードさについて言及しており、やったことのないテイストだったと答えている。

 

3期WANDSシングルの中ではサビが圧倒的なパワーでわかりやすく!といったタイプではなく、メロディー全体の起伏が大きい曲でもないが、それでも何故か耳に残るような、まるで取り憑かれた気分になる不思議な曲だ。

 

「doorsの名曲「ハートに火をつけて」を彷彿させる」と評されているように、キーボード(オルガン)のフレーズは随所で「ハートに火をつけて(原題「Light My Fire」)」から参考にしたようなものが聴こえてくる。

この怪しげで気味の悪い(褒めてる)キーボードが良いテイストになっているのは聴いたらすぐに理解できると思う。

 

Light My Fire

Light My Fire

  • ドアーズ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

The Doors - Light My Fire - YouTube (The Doors公式chよりライブ映像)

 

原曲「Light My Fire」は7分に及ぶ大作で、シングル版では間奏部分のオルガンパートが大幅にカットされて3分に短縮されたのだが、この『「今日、ナニカノハズミデ生きている」』もいっその事、アルバムVer.として間奏に木村さんのキーボード(オルガン)パートを長く入れて7分ぐらいのサイケデリック・プログレッシブなロックソングに仕立て上げても面白かったように思うが・・・そうするとまんま「Light My Fire」になってしまうか。

 

AZUKI七による歌詞はAZUKI七らしい、癖のあるような独特な言い回しの歌詞で内容が散らばっているようでまとまっている、抒情的で散文詩なバランス感覚が遺憾なく発揮されている。

 

それにしても、結果的に第三期WANDSは、シングルA面曲は全て作詞が外部からの提供(小松未歩・坂井泉水・AZUKI七)だったわけだが、どの曲もストレートな内容、言い回しではなく、どれも抽象的だったり哲学的だったり、婉曲的な内容だったのは偶然だったのか、必然だったのか。

小松未歩・坂井泉水・AZUKI七と三者三葉だが、ストレートな歌詞を書くこともあった彼女らだが・・・。

 

第三期のメインライターといえる木村さんや杉元さんの書く歌詞が悪い訳でもないし、ストレートでわかりやすく、引けを取らないと思うのだが、両者に歌詞を載せる時間が無かった(載せれなかった)のだろうか。

 

結果的に、第三期WANDSのシングルA面曲って、『AWAKE』の中で見ても歌詞が巧み、というか一味違う世界観が構築されているように思う。

というか、WANDS全体で見ても、歌詞の世界観に非常に重みがあった。

 

02 FREEZE

2代目ギタリスト杉元一生による作詞作曲ソング。

A面曲は外部の提供、カップリング曲は木村さんによるものが採用されていた中で、初めての杉元さんソングになった(正確に言えば、杉元一生初の音源は97年リリースのギターインストオムニバス『Guitar Monster Vol.2』収録の「With My Best Whishes」)。

しかもいきなり作詞作曲の両方を担当。

 

ダダンダン・・・ダダンダン・・・と、どっしりした(ターミネーターみたいな)イントロからクールなサビのメロディーが飛び込んでくる疾走ナンバー。

 

これまた3期特有なギター&キーボードの編成がしっかりと活かされたロックナンバーでストレートさとキャッチーさ、そしてカッコよさを兼ね備えた名曲。

 

「氷の中に君のすべてを閉じ込めてしまいたい」

というフレーズといい、メロディーといい、当時の音楽シーンを盛り上げていたGLAYやラルクのようなビジュアル系な雰囲気もある。

ビジュアル系の多くは邦洋のHM/HRに影響を受けていたが、杉元さんもWANDS加入前は洋楽ハードロックに傾向していた、と答えているので、その辺の共通点が、雰囲気の近さを生み出しているのかな、と感じる。

 

ギターは随所で速弾きを奏でており、フェイバリットギタリストがスティーヴ・ヴァイな杉元さんらしいな、と思ったりもする。そんでもって、99年にこれだけメタリックな速弾きしてる若いギタリストさんは当時の音楽シーンを考えたら貴重だと思う。

 

イントロのどっしりした感じから、いきなりのサビ、そしてAメロBメロからのサビと進んでいって間奏やアウトロでは一旦せき止めつつも、また流す、と曲の構成が溜めと疾走のメリハリを効かせたような感じがする。

 

欲を言えば、2番が終わって間奏→ラストサビ→アウトロっていう構成が駆け足かなぁと思ったり。

 

間奏でイントロのダダンダン・・・ダダンダン・・・という音とキーボード、そしてギターソロ、とブレイクしてギターで一気に疾走感を取り戻し、サビに進むのは良いものの、間奏とアウトロはギターソロも兼ねて長めの尺なのに対して間にサビが短く1回だけなのはどこか物足りなく感じる。

 

間奏とアウトロの尺が長いだけに、ラストのサビに工夫してもう少し盛り上がりがあってもよかったのかなって。

 

また、間奏から聴こえる女性の声はスタッフによるもの、とTwitterで答えている。

 

歌詞に関しても特徴的。

 

浮気相手がいる「君」にフラれることを悟った主人公のもどかしさを描写した歌詞で、その「君」を「氷の中に君のすべてを閉じ込めてしまいたい」と表現するのが大胆だが、詩的というか、少し青臭いもののカッコよさが溢れていて良い。

 

「つかみ切れないもどかしさが 理性まで狂わせるから 許してくれますか・・・  身勝手なMy Heart」

というフレーズは和久さんの吐き捨てるようなボーカルといい、フラれる苦悩がぐちゃぐちゃになっている感じがして好きなフレーズだったりする。

 

「二人眠るベッドからそっと 抜け出して誰に電話してたの 着飾り出掛けるその背中見て 寝たふりして奥歯を噛みしめた」

 

だとかリアリティある歌詞で「歌詞は実話か?」という質問が多かったそうだが、フィクションとのこと。

木村さんの歌詞も上杉さんの影に隠れて実は上々だったが、杉元さんの歌詞も中々上々で、この歌詞の巧さはこの曲以外にも「流れる雲の方へ」などで発揮されている。

 

カップリング曲ながらも曲のカッコよさも相まってか、ベストアルバム『BEST OF WANDS HISTORY』にはA面を差し置いて収録された。

 

また、タイアップ先であるプレイステーション用ゲームソフト『Cybernetic EMPIRE』にはオープニングソングとして2分弱のサイズとなっている。

地味にアウトロが違っており、キーボードが目立っている。

 

あと、イントロが始まって歌いだしが始まる前にかすかに「氷の中に~」とボーカルが入っているのは意図的なんだろうか。

ベストアルバムに収録されている方でもそのままだが。

・2021年のインタビューについて

ベストアルバム『BEST OF WANDS HISTORY』にはA面を差し置いて収録されたように、このシングル盤は「A面とカップリングは逆の方がよかった」という意見も少なくはなかった。

 

そんな中で判明した衝撃の事実が2021年の2月に発表されたFRIDAYの「和久二郎 50
’00年のグループ解散後、初のインタビュー
」の中での一幕。

4枚目のシングル、と名前はボカシているものの「『他にいい曲があるのに、なんでこの曲なんだろう』」と『「今日、ナニカノハズミデ生きている」』のA面起用にWANDSサイドは疑問に思っていたことが明かされた。

 

そして、「僕らが意見を言える場もなかった」という内部事情も明かされている。

 

「他のいい曲」に「FREEZE」が該当していたのか、もしくは「FREEZE」をメンバーがA面に推す思いがあったのかは不明だが、作曲者の杉元(安保)一生も過去にTwitterで「FREEZEをA面にした方が良かったのでは?」という質問に対し、

 

とツイートしていたりもするので、和久(松元)さんのインタビューにおける「意見を言える場もなかった」という発言と合致する。

Being系アーティストは提供曲が自作を抑えてA面起用される例が多々あるが、少なくともWANDS3期に関しては、会社側の主導によってA面を決めていた、という事実があるようだ。

 

会社の方針として、新人アーティストであるGARNET CROWのAZUKI七。rumania montevideoの三好誠をWANDSの看板を引っさげて売り出したかったのだろうか。

結果的にセールス面では大きく下回ってしまったが・・・。

 

正直、筆者もA面とカップリングが逆じゃね?と思った。

「「今日、ナニカノハズミデ生きている」」が曲という訳ではない。曲としての良し悪しではなく、A面としての良し悪しを考えると「FREZEE」の方が・・・と思ってしまう。

 

むしろ「今日ナニカ~」はアルバムの流れで聴くと非常にマッチしていて違和感がないだけに、出す場所を間違えてしまったようにも感じる。

03 「今日、ナニカノハズミデ生きている」(Original Karaoke)

コーラス有りのカラオケ音源。

じっくり聴くと、ラストに向けてキーボードがどんどん盛り上がっている様子が聴きとれる。

 

地味にサビ辺りのうねる様なキーボードが好き。