深海DIARY

感想・レビューをひっそり書いています。音を読む楽しみが共有できるといいな。

【アルバム感想】『THE BLACK BOX 1995-2005』 CRAZE

CRAZE 3rd ベストアルバム

2005年12月7日 リリース

THE BLACK BOX1995~2005

THE BLACK BOX1995~2005

  • アーティスト:CRAZE
  • 徳間ジャパンコミュニケーションズ
Amazon
『THE BLACK BOX 1995-2005』

収録曲

01 NAKED BLUE 
02 RISKY
03 to me,to you
04 hearts
05 夢追い人
06 アイスルココロ
07 I don’t like BACKSTREETBOYS
08 baby punks 2000
09 交錯
10 TRUE HEART
11 すばらしき明日へ
12 ALONE
13 THANK YOU MY FRIEND
14 DESIRE(未発表ボーナストラック)
15 JAPS(未発表ボーナストラック)
16 FUCKER Friends(未発表ボーナストラック)
 
ボーカル遍歴
M01~M03・M14~16→藤崎賢一
M04~06→緒方豊和 
M7→鈴木慎一郎 
M08~13→板谷祐

概要と感想

D'ERLANGER・BODYと二回もメジャー進出を果たした瀧川一郎(Gt)菊地哲(Dr)コンビによる3つ目のバンドCRAZE。このバンド4枚目のベストアルバム。結成10周年記念プロダクツ4ヶ月連続リリース第4弾としてリリースされた。CRAZEは2005年に10周年ということで活動していたが、ボーカルの板谷祐が脱退を表明したため結果的には最後のアルバムとなった。CRAZEはボーカル不在のまま06年まで活動したが遂に解散。
ボーカルが4人(リハーサル時を含めると6人)も変わり、最終的にはギター以外がZI:KILLのメンバーになったという数奇な運命を駆け抜けたバンドだった。
 
リハーサルの頃は伊藤可久→濱口正勝(TOY BOYSとしてイカ天に出演後デビュー。浜口祐夢と改名してRAY-GUNSを結成。∀ガンダムのOP曲を歌い、その後ソロでテニスの王子様のEDを歌った)に。リハーサル時代のライブ音源は某動画サイトにアップされている。
 
そして藤崎賢一(元Justy-Nasty)が加入し、メジャーデビュー。アルバムを複数リリースしデビューシングルもオリコン10位と良いスタートダッシュだったが、藤崎が脱退。緒方豊和(元MAJESTY)が加入するもアルバム2枚で脱退。次に鈴木慎一郎が加入するもアルバム1枚で脱退。最後に板谷祐(元ZI:KILL)が加入し、最終的にギター以外が元ZI:KILLという流れに。
ベースは元ZI:KILLの飯田成一。
 
レコード会社の壁を越えた全シングルA面を収録。基本シングル時のバージョンが収録されたので(M11はアルバムバージョン)、アルバム初収録の音源も多く、リマスタリングもされており、後期のマスタリングに合わせたようなダイナミックな音に変貌している。
また、シングルをリリースしていなかった鈴木慎一郎時代についてはアルバムからM07が選曲されており、デビュー後の歴代ボーカリストの曲が集った唯一のアルバムでもあった。
 
CRAZEの入門ベストとしてうってつけの1枚。CRAZEはメジャーデビュー後にボーカルが4人も変わりベストは藤崎・板谷時代の2つに限られていたので、オールタイムのベストを所望なら現状この1枚しかない。藤崎時代はヒット性も含んだビートロックを。緒方時代になるとポップスになり、鈴木時代でハードなロックに。そして板谷祐の時代には攻撃的なんだけど、ラフな部分も見えたパンキッシュに。そんなバンドの生き様がそのまま感じられるベストアルバム。
 
トータルで見るとシングルではシングルらしく売れそうな曲が選ばれており、アルバムでは激しめのロックをしていたな、と思うし、シングル曲が気に入ったのならそのままアルバムに進んでも問題ないと思う。V系のメンツが結集されたバンドではあるが、V系っぽい雰囲気はなく、純粋に自分たちのやりたいロックを突き詰めようとしていたようにも思う。が、いかんせんボーカルが固定されず、瀧川一郎と菊地哲のコンビも歯がゆく感じた部分もあったのだろうか。CRAZE解散後はD'ERLANGERを再結成し、イベントライブではD'ERLANGERのボーカルkyoによってCRAZE時代の曲も披露されている。
なんやかんやでkyoさんが一番フィットしたのだろうか。
 
また、本作最大のセールスポイントはM14~M16のボーナストラック。これは藤崎賢一ボーカルによるもので彼の脱退によりアルバムに『ZERO』に収録されなかった音源たち。
藤崎の後に加入した緒方によって歌いなおし(題名や歌詞を変更したものも)されていた為、最後の最後に藤崎の未発表音源が出てきて初代ボーカリスト藤崎賢一の歌声で幕を閉じるという、どこか不思議な感じだ。
 
最後に、10年で4人もボーカルが変わるという、日本のメジャーシーンでは唯一無二のバンドだが、これをリアルタイムで最後まで応援した人は数ある交代劇にどう思ったのだろう。筆者のように完全後追いの人間はあらかじめ情報を知っているので、アレだけど、結成当時から追いかけていたファンは、また変わるの⁉って感じだったのかな。

Pickup Songs

14 DESIRE

1分25秒という短さながらFワードな文字を連呼しまくっている曲。緒方時代よりもFワードを連発しまくっており、ほんと、末期の藤崎さんは飾り付けずただひたすらに鬱憤を吐き出すような攻撃的な作詞オンパレードだった。だが、それがいい。

15 JAPS

藤崎ボーカルが発表されたことで、藤崎・緒方・板谷祐と計3人のボーカルテイクが存在する曲となった。CRAZEはどんどん音が狂暴になっていったが、順番に聴いていくとその過程がわかっていく1曲。
この曲は『ZERO』以降は緒方作詞のものが使用されていたが、藤崎ボーカルのものは作詞が藤崎でだいぶ歌詞が変わっておりとにかく鬱憤を吐き出したような「コワセ、コワセ」と緒方の時以上に破壊的になっているのが特徴。社会のなめ腐った部分をひたすら歌っていく藤崎のボーカルは鬼神めいたものがある。緒方時代と違い、キーボードと東京スカパラダイスオーケストラの音が入っているのも特徴。

16 FUCKER Friends

『ZERO』では「言葉よりも」という題名に変わった。緒方による作詞も破滅願望的な後ろめたい焦りがありつつも、立ち上がっていくポジティブな部分も描かれた恋愛ソングだったが、藤崎時代の作詞は緒方のとき以上に破滅的で立ち上がることすらできないけれどせめて願いたい、的な詞になっている。
タイトルの割には爽やかな曲調。また、これら藤崎時代の未発表音源のうち2曲に作詞にFUCKの文字が入っていたという荒れっぷりだが、それぐらい色々と藤崎さんも思うところがあったんだろうな、と。