WANDS 3rdシングル
1992年7月1日 リリース
概要
大島康祐(大島こうすけ)が在籍した最後のシングルとなった。つまりはWANDS1期のラストシングル。
大島さんの詳細な脱退時期については上杉さんの自伝『世界が終わるまでは・・・』に記載があるので、そちらを購入して確かめてもらいたい。
大島さん在籍時でこの曲を披露した際のTV出演動画があり(山瀬まみ司会の番組)上杉さんの自伝の記述を参考にすると、リリースしてすぐの辺りで出演していたのだろうか。
ミュージックステーションに出演した段階ではキーボードは木村真也(まだ眼鏡はしていなかった)に交代されていた模様。
言わずと知れたミリオンヒット曲。166万枚の売り上げを誇り、バンド単体としては最大のヒットとなった。
実はチャート初登場は47位と1st・2ndを大きく上回りトップ50位に初めてランクインするも、ヒット曲というわけではなかった。
その後、チャートをずっとうろつき、中山美穂&WANDS名義でリリースした「世界中の誰よりきっと」の大ヒットに押されてランキング急上昇の末、オリコン1位になり最終的にミリオンヒットとなるという、ものすごい持久力のある1曲だった。チャート推移に関してはBeingのライナーノーツに詳しく載っているので、そちらを参考にしてもらいたい。
01 もっと強く抱きしめたなら
作詞は上杉さんとコピーライターであり作詞家の魚住勉の共作。魚住勉氏が書いた詞を上杉さんが置き換えるという形での共作、と以前ネットのインタビューで見たが、元の記事は消えているのか探せなかった。
魚住勉氏はタイアップ先である三井生命のCMに出演していた浅野温子の旦那さんであり、映像と歌詞とで夫婦共演がなされている。
ミュージックステーション出演時、上杉さんは詞のテーマについて「慌ただしい都会の中でも息が抜けるような」と発言している。
ちなみに、当時のミュージックステーションでは歌詞の一部をゲストのミュージシャンに変えてもらうコーナーがあったようで、この曲も題材となり
「もっと強く〇〇なら もう他に〇〇はない」
と〇〇の部分をゲストの各々が穴埋めを行い、真面目に埋めるものもいればその人の個性であったりネタに走ったりしていたが、同じ回のゲストだったZARD(まだ4人編成時代)の坂井泉水さんは「もっと強く好きだと言ってくれたなら もう他に私を奪うものはない」と真面目に穴埋めしていたのが、某動画サイトで見て印象的だった。
でもこの穴埋めコーナーって当事者は難しそうよね。ネタに走ったら失礼にならないか?と思う反面、真面目すぎると盛り上がらないしで。
今のネット社会でネタに走った穴埋めしたら下手すりゃプチ炎上しそうだけど。
話を戻す。
イントロのホルンを聴いた瞬間に名曲だと確信するであろう大名曲。
その後、耳に残るジャ~ラ~ラ~というギターフレーズに押されてそのままAメロに引き込まれる構成が流石と言わざるを得ない。このインパクト加減が名曲の秘訣であろうか。
WANDSの中ではひときわ爽やかなサウンドで伸びのある上杉さんの歌声とがマッチしており、輝きに満ちた1曲。
曲のタイトルは『もっと強く抱きしめたなら』だがサビでは「もっと強く君を抱きしめたなら」と歌っている為、ややこしい。油断していると普通に間違える。
5期WANDSにも早い段階でセルフカバーされ、この曲のバージョンは4つ(シングル・アルバム・リミックス・5期)と多い。
筆者はギターに関してはアルバムバージョン。ミックスに関してはベストのリミックスバージョンが好き。
一つ気になる点として、おそらくこの曲は長門プロデューサーが選んでWANDSが演奏することになったんだとうけど、この判断に大島さんはどう感じたのだろうか。(上杉さんは爽やかな曲、って理由で驚いたという逸話はインタビューや自伝で述べている)
『寂しさは秋の色』の時と同じく、バリバリ作曲のできる大島さん曲を採用せずに多々納好夫(BAAD「君が好きだと叫びたい」などBeing系アーティストを中心に作曲を提供していた人物)の曲を採用。
編曲も葉山たけしで大島さんが築き上げたWANDS1期のサウンドとは全く違う王道Beingポップ路線。
大島さんは特徴的なカラフルでダンサンブルな演奏をすることはなく、一人のキーボーディストとして淡々と作業をこなすような演奏だし、カップリング曲は大島ナンバーとはいえ・・・。
大島さんは現在に至るまでBeingの主力作曲&編集家として在籍しており、WANDS脱退後は他のアーティストのA面作曲やアレンジは担当していたし、自身の新しいユニットSO-Fiを結成したりもしていたが、WANDS時代は扱いがあまり良くなかった印象を受ける。
そもそもWANDSの始まりって上杉さんのためのユニットというより、大島さんのユニットってことで長戸プロデューサーが引き合わせてた感じがするんだけど、いざ音楽を聴いたら長戸プロの思ったものと違っていたのか?
正直第1期WANDSをBeingはどう捉えていたのか、いまいちよくわからないんだよなぁ。
大島さんはその後、中山美穂とコラボした『世界中の誰よりきっと』には参加しないどころかこの曲でTV出演する前に脱退するというスピーディーな脱退だったが。
大島さん本人からの脱退理由を記載したインタビュー等を見たこともない(公式には自信の音楽を追及・音楽性の違いとなっている)ので細かい理由は不明。
ただ、こちらの動画(Infinite Colors TVより[公式ch])にて、明石昌夫が「大島は女性ボーカルがやりたいって(脱退した)」と発言しており、女性ボーカリストの方に魅力を感じていたのか?
SO-Fiは本シングルリリースから約1年後の93年にデビューしている。
上杉さんの自伝にある大島さんが脱退するってなったときの柴崎さんの記述から、柴崎さん的には勿体ないと思っていたようだ。
SO-FiはWANDSの時よりもロックテイストな曲が多く、DEENの田川伸治が演奏に参加したりしていたが、柴崎さんにも合っているようなサウンドではあったし。
ちなみに、この曲にはPV(MV)が2種類ある。
一つはDAIGOがパロディしたことでも知られる幕張海浜公園の大芝生広場で撮影されたもの。
BeingのPVって簡易的なものが多く、「寂しさは~」や「ふりむいて~」もただスタジオで演奏してます感が満載の普通な映像だったが、3rdシングルのPVは外に出てしっかり撮影という力の入った?映像。Being側もこの曲は売れるぞ!って気合があったのか、たまたま外で取りますってなったのか。
もう一つのPV(MV)は木村真也加入後に撮影された2期バージョン。
こちらはBeingらしい簡易的なPVで白黒の映像に天井の低いスタジオで淡々と演奏しているといった内容。
2期バージョンでは2番がカットされている。また、木村さんがほとんど映らず、彼の手しか映らないレベル。なのでこの時、眼鏡をかけているかわからない。
脱退している大島と木村とで新規リスナーが混乱しないように急遽制作したのかもしれないが、現在では基本的に1期のPVが使用され、2期のPVは見かけない。映像ソフトにも収録されていないようで、レアPVとなっている。
02 Listen to the Heartbeat
カップリング曲は作曲編曲を大島こうすけが担当した大島ナンバー。今までの大島サウンドから更に磨きをかけた渾身の1曲。
正直、「もっと強く~」のインパクトが大きいだけで、この曲も普通にA面を張れるポテンシャルはあったと思う。
最初に心臓の鼓動のような音が聞こえ、そこから明るいシンセサイザーサウンドがグンと引っ張っていくようなダンスチューン。
サビは明るく、開放感もあり、癖になるサウンド。TMNやaccess、SOFT BALLETなどが凌ぎを削っていた92年だが、それに引けを取らないぐらいにはキーボードとギターという演奏陣で制作されたシンセロックって気がする。
このサウンドの勢いはSO-Fiに、もっとロックにもなって継承された。
この曲がリリースされた92年は浅倉大介のaccessが台頭してきたり、90年代後半のシンセサウンド全盛期(avex系)の伏線、といったような感じで様々なシンセサイザー中心のユニットや、それを取り入れたアーティストが登場していたが、WANDSがそういった層に刺さらなかったというのはミスマッチというか、セールスの方向がズレてたのかなぁと後から思ったりする。
1期はライブをすることなく終了したようだが、PVにしろライブにしろ、誰か一人ぐらい軽くでも踊っていれば様になっていたかも、とは思うが、まぁ踊ったりするわけもないか。TM時代の松本孝弘も軽くギター弾きながら踊ってたりもしてたが(木根さんもだが)。
宇都宮隆や貴水博之みたくボーカルしながら踊ってたり、秋山勝彦や森岡賢みたいにキーボードが踊ってたり。
ダンサンブルな音楽はやっぱり誰か一人はノリノリなイメージあるのと、見栄えよくなる感じがしてね。
ちなみに、シングル盤では歌詞の一部「Like Just a~」は誤字しているのかLikeに聴こえないような・・・。
03 もっと強く抱きしめたなら(オリジナル・カラオケ)
コーラス有りのカラオケ音源。
PVやTV出演時は柴崎さんがマイク前で歌っているが、この音源を聴くと上杉さんの声で元々はコーラスしてるのかな?
サビで歌をなぞるシンセベル(?)が良い感じ。