WANDS 8thシングル
1994年6月8日 リリース
概要
WANDS8枚目のシングル。シングルとしては「愛を語るより口づけをかわそう」以来のミリオンヒット曲。
『SLAM DUNK』のエンディングテーマ曲であり、シングル盤も裏面をスラムダンク仕様に着せ替えが可能になっている。
01 世界が終るまでは・・・
織田哲郎作曲。言わずと知れたミリオンヒットソングでいて大名曲。
『SLAM DUNK』のエンディングテーマ曲に使用され、日本のみならず、海外でも愛されている楽曲となっている。
今となっては「もっと強く抱きしめたなら」や「時の扉」「愛を語るより口づけをかわそう」を差し置いて圧倒的な代表曲として扱われており、WANDSといえばこの曲、という風潮が強い。
もっと言えば、上杉昇=MVのファッション(バンダナやチェック柄といったガンズのアクセル・ローズ風)というイメージも強いのではないだろうか(モノマネ番組とかでこの頃のファッションをイラストに使用されている)。
アニメソング総選挙など、アニソン系という観点からも非常に人気の高い。
まだ本格的にハードロック・グランジロック路線へ移行する前の、打ち込みサウンドを駆使した路線のサウンドだが、それでもだいぶハードテイストなロックサウンドとなっており、結果、『PIECE OF MY SOUL』に収録されていてもあまり違和感のない仕上がりになっている。
スラムダンクのエンディングテーマとして有名な曲だが、詞の内容はスラムダンクとは全く関係のない失恋ソング(自伝にもスラムダンクを意識していなかったと書いてある)。まぁ、「あなただけ見つめてる」とか全くバスケと関係ない楽曲が主題歌に選ばれていたりと今更だが。
筆者的には2番サビの
世界が終る前に 聞かせておくれよ 満開の花が 似合いのCatastrophe
誰もが望みながら 永遠を信じない ・・・なのに きっと 明日を夢見てる
荒廃的なテーマの詞の中に「満開の花」という荒廃と正反対の新たな始まり、再興といったニュアンスのワードを入れるのは凄いな、と思う。
イントロの雄大なキーボードに刻むギター。その後、カッと開けていくギター。
ズンズンと進んでいくメロディー、哀愁のある歌声など、非の打ち所がないアレンジ、演奏、歌声。
まさに攻・走・守の全てを兼ね備えた名曲といえよう。
今となっては上杉さんの自伝のタイトルにもなっており、この曲に対する記述も多い。
織田哲郎のシークレットゲストとして登場したアニサマでのこのや海外(特に中華圏)における人気っぷりについてなど、WANDSの代表曲であると同時に、世界に羽ばたいたこの楽曲に対する思いについて詳細に書いているのも面白いが、タイトルに込められた意味について書かれているのが興味深かった。
また、上杉さんの自伝にて、この曲がビーイングと長門プロデューサーによるWANDSの集大成、という旨のコメントをしているが、まさにその通りで次回作からは上杉昇プロデュースによるWANDSが出来上がっていく。
そういう意味では、上杉昇による最後の特大花火のような輝きと儚さを感じる。
なお、5期においてはお披露目ライブを始め、TV出演時など早い段階で披露はしているものの、CD音源化は(記事作成時点で)未だにしておらず、温存された状態となっている。
スラムダンクの劇場版が決定されているが、そこに合わせてシングル化するのだろうか。劇場版挿入歌の新曲と、「世界が終わるまでは・・・(5期Ver)」で両A面とか。
上杉昇によるセルフカバーもリリース予定で、そちらではアレンジ織田哲郎となっている(「SHOW WESUGI 30th All Time Play List Album 永劫回帰 Ⅱ」特設サイトより)。
まさか2022年になって上杉昇によるセルフカバーを。そしてWANDS5期によるセルフカバーも聴ける可能性がある(まだ時期は不明だが)、というのは、ただただ熱い。
最後に、こちらにおいてTV Ver.について少しレビューしたのだが、一部カットはあるものの、演奏やボーカルはおそらく同じもの(だと思う)で、この曲のアレンジは早い時期に完成していたのだろうか。
と、いうのも、スラムダンクの主題歌はどの曲もCDのミックスと違っており、どれもラフなボーカルに荒削りな演奏。
そもそもBeingはCMで流れる際においてもミックスが違っている、という曲が多々あったが、「世界が終わるまでは・・・」に関してはCMの時も、アニメの時もミックスがCDのものと同じに聴こえる。
その為、レコーディングはだいぶ早くに終わっていたのか、ミックスは1種類しかないのか・・・。
02 Just a Lonely Boy
柴崎浩作曲。「星のない空の下で」以来の編曲WANDS名義のカップリング曲。
後に+6としてベストアルバムに収録された。
TOTOのようなグルーヴ感のあるポップスサウンドは、今までとは別の形でポップな曲調で、WANDSの中では逆に異様なポップスなんだが、イメージを損なわず、+6に選出されるぐらい、いや、A面を張れるぐらいにポテンシャルの高い1曲。
柴崎ギターと木村キーボード、両名の演奏が新境地にたどり着いたようなバランスの良いサウンドが特徴的。
跳ねたキーボードにノリよくリズムを刻むギターの共演は2期の中では一番バランス良くロックしていると思うし、ダンサンブル+ロックという大島時代から築き上げたものを、柴崎&木村が新たな次元に持って行ったのはこの曲だと感じる。
SEやコーラスに力が入っているし、上杉さんのリズミカルなボーカル、言葉選び、とどこを取っても新境地な1曲。
「愛じゃない 愛想ない 相変わらずのFriends」や「忘れない 忘れたい 忘れられないMY LOVE」といったサビの押韻は耳に残って離れない。
ただ、あまりにもタイミングが悪かった不幸な1曲かもしれない。
A面は「世界が終わるまでは・・・」という大名曲。
そして次回作からはハードロック路線へと本格的に移行。
と、この曲もA面を飾るポテンシャルを持ちながら、そして、柴崎&木村の息のあった演奏が実現しながらも、2期によるポップロック路線は終了してしまうという。
上杉さんの音楽趣向の実現に向けて、柴崎&木村両名が手を貸してハードロック・グランジへと変貌していくが、筆者のTwitterで呟いたように、もし、柴崎さんがWANDSの主導権を握っていたら、TOTOのようなポップ・ハード・AORといった複数の要素をバランスよく混ぜたロックユニットになっていたのかもしれない。
時は経ち、5期では柴崎&木村コンビが復活したが、筆者的には、この曲のようなロックサウンドを再び聴けるのでは、と期待している(出来栄えの良さを感じていたのか、Just a Lonely Boyは早い段階で5期によるセルフカバーが発表された)。
『Little Bit…』の記事でも書いたが、キーボード+ギターのポップロックサウンド路線も進化していったため、やはり、ポップ路線のアルバムをもう1枚、聴いてみたかった、と改めて思わせる楽曲だ。