深海DIARY

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【アルバム感想】『時の扉』 WANDS

WANDS 2ndアルバム

1993年4月17日 リリース

 

時の扉

時の扉

  • アーティスト:WANDS
  • EMIミュージック・ジャパン
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収録曲

01 時の扉

02 このまま君だけを奪い去りたい

03 星のない空の下で

04 もっと強く抱きしめたなら

05 ガラスの心で

06 そのままの君へと…

07 孤独へのTARGET

08 Mr.JAIL

09 Keep My Rock'n Road

10世界中の誰よりきっと 〜Album Version〜

 

概要と感想

木村真也加入後に制作されたWANDS2ndアルバム。第二期WANDS初のアルバム。

正確にはM04は第一期の楽曲ではあるが、その辺はアバウトに。

 

5thシングル『愛を語るより口づけをかわそう』と同時発売

 

『時の扉』『愛を語るより口づけをかわそう』共々、チャート1位を記録し、さらにミリオンヒットも記録した。そして4週連続で首位をキープしたようで、これは現在までのところ、“シングル、アルバムともに初登場の作品としては最長の同時首位記録”とのこと(OKMUSiC連載コラム    「『時の扉』はWANDSの確かなポテンシャルを示した90年代を代表する一枚」から引用)。

 

大島こうすけの脱退により、メインコンポーザーが不在となったが、大島さんのストック曲を始め、織田哲郎、川島だりあ、多々納好夫とBeingのクリエイターが脇を固め柴崎浩、そして上杉昇も作曲をこなしWANDSというユニット(バンド)の形を模索して完成されたWANDS第二期最初のフルアルバムはBeingブームを一つ象徴させるサウンドを作り上げたと同時に、90年代の日本のロック・ポップスの見本となるような作品になったと思う。

 

前作『WANDS』では大島こうすけという大黒柱がサウンドを太くガッチリと支え、WANDS=大島サウンド+キーボードという構図が出来上がっていたが、その大島さんが脱退し、その後のWANDSを支えた柴崎・木村両名であるが、本作からは柴崎さんのギターがサウンドを引っ張るというギターユニット(バンド)としての構図が強まったように思う。

第一期はキーボードの隙間をギターが埋める感じだったが、本作からの2期ではギターの隙間をキーボードが埋めるような感じに。

 

でもって絶対的存在であった大島こうすけが脱退したことで、音楽性は大きく変化。

M01『時の扉』で見せるように、ある意味WANDS=ロック+ダンサンブルという1期からのサウンドもあるが、編曲に葉山たけし・明石昌夫とこれまたBeingクリエイターが多数参加している。この結果が先述したBeingブームを一つ象徴させるサウンドの完成である。

 

DEENのセルフカバー(M03)や中山美穂のコラボレーション(M10)は共にミリオンヒット。そしてM01とM04もミリオンヒット。それらを収録してのアルバムである。

このセールス結果からもわかるように、このアルバムは90年代のBeingブームを象徴させたアルバムと言って過言ではないと思っている。

 

Beingブームどころか、日本の音楽、J-POPというジャンルのお手本といえるようなサウンドである。

 

ただ、この成功を悪く言えば「産業ロック」と言われてしまうもので、「売れ線」という呪縛がもたらした「時代性」という言葉が付きまとった作品かなと。

この点ではある種、Beingという会社を象徴したような感じはある。

 

補足しておくと、筆者的には「産業ロック」だとか「時代性」という言葉で作品を表示するのはナンセンスだと思っている。商業主義とか言われようと、大衆に歓迎されるように、緻密に計算して出来たサウンドを卑下するのは違うと考えている。あくまでわかりやすい形での単語を使用しただけである。

 

シングル曲が前半に固まり、後半からは大島さんストック曲に加え、川島だりあさんの曲が投入され、柴崎・上杉両名の自作も聴けるが、前半と比べるとスケールダウン感が否めず、インパクトが薄い。

筆者の個人的な思いだが、せめてM04を前半に置くのではなく、後半に置いた方がスケールダウン感を阻止できたように考えちゃう。M06とM07の間とか。

 

M05〜M09が同系統のダークなサウンドなのでメリハリがないと感じてしまう。

上位(A面)曲は光で下位(B面)は影というか。

 

こういった印象は、次回作以降のWANDSと、いや前作の作品も含めて比べてもWANDSらしさが薄く、お手本すぎる保守的なメロディーやサウンド1曲ずつ聴いていくと上品に味わえるが連続して聴いていくと胃もたれするような感じでうまく消化できないというか。

ケーキを一つ食べると美味しいけど、連続で食べろ、と言われたら甘~いクリームが段々トラウマになっていくような感じ(例えが極端すぎる)。

 

アルバム曲も素晴らしいのである。1曲ずつ聴くと印象も深まる。ただ、連続して聴くと同系統のサウンドが連発され印象が薄まるというか。

 

逆にこの作品の後から見られるようなWANDSらしさという看板を外して聴けば、らしいアルバムでもある。

 

ストレートでメロディアス、そして煌びやかな上杉さんの聴きやすいボーカルに、AORな感じやハードな音も出す柴崎さんのギター。そして、ガッシリと音を埋めてポップさとドラマチックさを演出する木村さんのキーボード。オケヒ連発。

Beingが手掛けたユニットというらしさが、ふんだんに感じるのである。

 

だが、それ以上のWANDSという確固たる姿が見えにくい、という意味では残念なアルバムで、アルバム曲はWANDS全作品の中じゃ一番印象が薄い。

 

M03・M08・M09と上杉さんの自我が出た作詞もあるが、「突出したメッセージ性があるわけではないので聴き手を選ばない内容」とOKMUSiC連載コラムに書かれるぐらいには、その自我さえも飲み込んだ「Beingブーム期の1枚」さはあるし、「売れ線」という言葉の呪縛にどう向き合うか、でこのアルバムの印象が大きく変わるのではないだろうか。

 

良くも悪くも、筆者がWANDSのリアルタイムを知らない後追い世代だからこそ言えてしまう、ある種、後だしジャンケンだからこその文章、感性かもしれない。トータルでWANDSという歴史を知っているからこそ、らしさ、で括ってしまうのだ。

 

少なくとも、当時の大衆リスナーにとっては、本アルバム『時の扉』のようなWANDSを求めている者の方が多かったのはセールス的にも揺るぎない事実である。成功の1枚だったことには変わりない。

 

あと、全体的に湿っぽいサウンドにミックス、マスタリングされているが、もっとギターはエッジを効かせて、キーボードもパワフルにしてても良かったんじゃないかと。

この湿っぽさが、良くも悪くもポップスさを醸し出している。

Pickup Songs

01 時の扉

曲の感想はシングル感想を参照。

02 このまま君だけを奪い去りたい

織田哲郎作曲。ミリオンヒットを記録したDEENデビューシングルのセルフカバー

わずか1か月でのセルフカバーとなっている。作詞が一部違っている他、歌いまわしも少し違う部分がある。アレンジもだいぶ変わっている。

 

近年になって、この曲についての新たな秘話が長門プロデューサー本人の口から語られた。

 

FM滋賀のラジオ『OLDIES GOODIES(2021年9月25日放送分)』にて長門プロデューサーが「「このまま~」は「時の扉」と両A面でリリース予定をしていたが、クライアント側のクレームがあり、別ボーカルを立てて単独A面化してのリリースになった(要約)」

と発言しており、この話があっての試しに歌って採用された別ボーカルがソロデビュー予定だった池森秀一。そしてDEENを結成させデビュー、という流れに繋がっていることが判明した。

 

DEEN版では歌詞の一部が違うが、これは長門プロデューサーが訂正させたのだろうか。レコーディングもWANDS版の方が先に出来ていた可能性が?

 

DEENによる「このまま~」が金色ポップなら、WANDSによる「このまま~」は銀色ポップといった感じで、どちらにも良さがあると思う。

WANDS版はおとなしめのサウンドで、上杉さんの伸びやかなボーカルとビブラートが堪能できる。シングルっぽさはないものの、DEENの時とは違う色気と男らしさ漂うドラマチックさが良いんじゃないだろうか。

 

03 星のない空の下で

柴崎浩作曲。

編曲WANDSという表記が初めて出た楽曲。

アルバム前半のシングル群に喰われないようなキャッチーなサウンドが特徴。

 

上杉さんの自伝『世界が終わるまでは・・・』に詞の内容について詳しく書かれているが、若くして亡くなった上杉さんの親友のことをイメージして書かれている。

センチメンタルに書かれた未来(あした)と自由(ゆめ)に対する不安、そしてそれに一人で立ち向かわないといけない上杉さんの精神と、弱みをさらけ出したような歌詞は悲痛だ。

 

「キズつき急ぎすぎたアイツに 「さよなら」の声の言葉も届かない」と歌っているあたり、輝かしい成功の裏に大きなジレンマもあったんだな、と改めて思う。

 

一方でサウンドに関してはキャッチーで後に+6として選出されたぐらいだが、この曲にはおそらく、元ネタがあって、TOTO「Only The Children」だと思う。

アッパーのあるキーボード、サビ前のジャララジャ~ラといい、まんまTOTOである。

元ネタがあったからこそ、早い段階で編曲WANDSでいけたのかな、と勝手に推測している。

Only the Children

Only the Children

  • Toto
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

柴崎さんはTOTOがフェイバリットアーティストの一つである(スティーヴ・ルカサーが好き)ことはインタビューやラジオで語っているし、その影響か。

ちなみに、柴崎さんは五期始動後のインタビューにてWANDSというバンドをTOTOみたい、としている(メンバーの流動に対して)。

 

5期の「もっと強く~」もそうなんだが、ポップ路線での柴崎さんギターは所々でスティーヴ・ルカサーっぽいギターしてる気が。

 

一応元ネタの「Only The Children」も将来の不安を嘆いた歌ではあるが、不安は至る角度と対象が全く異なっている。

 

04 もっと強く抱きしめたなら

曲の感想はシングル感想を参照。

 

表記は無いが、ギターの演奏が違っている。

筆者としては、こちらの演奏の方が好き。

08 Mr.JAIL

柴崎浩作曲。

JAILは訳すと「牢獄」や「刑務所」を指すようで。

 

イントロの煌びやかなキーボードに、オケヒを連発したスリリングなサウンド。そして「自分はSINGING'DOLLだけど恋もしていないし、ありえないウワサも沢山あるぜ(要約)」と当時の鬱憤を書いたような歌詞が強烈な1曲。

週刊誌とかに色々書かれてたのだろうか。とにかくLOVE Storyに仕立て上げることへの批判をストレートに書いて、挙句「人はみなIQなくしてる」と強い表現をしている。

 

アルバムに収録された音源では、一貫してLOVE StoryやLOVE GAMEに仕立て上げることへの怒りを書いているが、ライブでは2番の歌詞が大きく変わり

「何処かのうさんくせぇ評論家が 何やらほざいてるけど 本当のrock 'n' rollなんて カート・コバーンだってきっと わからねぇだろう」

と歌っている模様が映像に残っている。

 

アドリブだったのか、レコーディングの際にストレートに評論家と実名を出すのはNGだったのかは、さておき(後に「David Bowieのように」ができたけど)。大尊敬するカート・コバーンにだってロックってもんはわかってねえよ、と音楽性においても色々言いたかったのかもしれない。

 

まぁ、「中山美穂のバックバンドではなかったのか?(中略)あわてて作ったぽい、むりやり曲をデッチあげてアルバムにしてしまったように聴こえます。」とCDジャーナル(再発盤のレビューを引用)に書かれるぐらいだし、大成功の反面、当時から評論家様の間では色々言われていたのかもしれない(Beingという会社自体、色々と言われていたようだし)。

 

筆者的には、メロディーは良いんだけど・・・。って感じの曲で、ベースラインが主張してたりするも、やはり打ち込みで済ました無機質感が目立ち、歌詞にしろ、歌い方にしろ、ハードロック向けなのになぁ、と。生演奏だったら良い感じになりそうなんだが。

 

この辺が同じ編成でも生ドラムやベースも使うTM NETWORKと違うところで、サウンドに躍動感がないのがマイナスに働いてしまった曲みたいな印象。

 

09 Keep My Rock'n Road

初の上杉昇作曲。

2分20秒程の短い曲。

 

ビートルズのような明るくユラユラした曲調で、ハンドクラップや最後にはラララ合唱で終わるという、アルバムの中では異色なナンバー。キーボードが雰囲気を良くしている。

 

明るいサウンドだが、歌詞はだいぶ暗く

「意味もなく 消えていく夢を 大切な夢を失った」

としたうえで

「涙 渇けば またそこから始まる 咲き誇る花と 瓦礫の中をずっと歩き続けよう」

と明るく割り切ったような歌詞は本音の部分だったのかな、と今の上杉さんを見ると感じる歌詞。

 

10世界中の誰よりきっと 〜Album Version〜

曲の感想はシングル感想を参照。

 

WANDSメインによるセルフカバー。

オリジナル版では編曲が葉山たけしだったが、Album Versionのアレンジは明石昌夫が担当している。

 

デュエット感は出しておきたかったのか、宇徳敬子がコーラスを担当。

 

弾けるようなポップスサウンドだったオリジナル版と違い、落ち着いてテンポも落とした上品なサウンドに。

5期でのセルフカバーではオリジナル版に近くなったので、このテイストでのセルフカバーは2期が唯一になるのかな。