WANDS 11thシングル
1996年2月26日 リリース
概要
WANDS11枚目のシングル。そして第二期WANDSラストシングル。
前作からわずか2ヵ月という短期間でリリースされている。
前作に続いて完全自作シングル。
公式に両A面仕様であるとプロモーションされているが、『Blind To My Heart』はベストアルバムにも未収録であり、現時点ではシングルでしか聴くことができない。
脱退の経緯は自伝に詳しく書かれているので、そちらを参照してほしいが、ざっくりまとめると、次のシングル曲として持ってこられたのが「愛を語るより口づけをかわそう」路線のポップソングだったから、という流れのようだ。
また、色々あって柴崎さんも脱退する流れとなり、上杉昇&柴崎浩でal.ni.coが結成。
残された木村さんはWANDSの屋号を継承し、第三期WANDSへと移行する。
01 WORST CRIME 〜About a rock star who was a swindler〜
柴崎さん作曲。編曲も柴崎さんが担当している。
副題「About a rock star who was a swindler(詐欺師だったあるロックスターについて)」からわかるように、身を切った内省的歌詞の極みみたいな壮絶ロック。
ユラユラと揺れるようなメロディーとアッパーの効いたサビが特徴な生音重視のロックナンバー。
穿つようなボーカルにハードでヘヴィ、そして重いんだけど、疾走感もあるギター。
そしてサビ終わりの流れるようなボーカル、演奏が良い。
じっくりと聴くとアコースティックギターが随所で鳴っているが、これは上杉さんによるアイデアのようだ(『No.』の紹介映像より)。
一方でキーボードの立場は前作以上に薄まり、パパパパ~パパパパ~と上杉さんが同時にゴニョニョ語っている間奏部分とその後のギターソロのバックで鳴っているが、それ以外では聴こえる部分が少なく、もっとこう、やりようはなかったのか、と思ってしまうのは正直なところ。
ちなみに、木村さんは本レコーディングには新たに購入したというコルグのTRINITYを導入している(これも『No.』の紹介映像より)。
前作に続いて古井弘人がマニピュレーターとして参加している。前作同様に音を試行錯誤していたのかも。
ベースは渡辺直樹。ドラムは黒瀬蛙一。
「汚れなきものだけ 探しながら 汚れてしまうこの Mind
清らかな嘘なら 許されるの?」
と歌詞はとにかく内省的。全てが。
前作「Same Side」と比べるとまだメロディアスだしポップスの影が良くも悪くも残っており、よく言えば『PIECE OF MY SOUL』から続いた試行錯誤の到達点、悪く言えばどこか突き抜けきれなかったようにも感じる1曲。
al.ni.coでみられなかった歌いやすいメロディアスさも残った1曲でもあり、al.ni.coというより一時期の上杉昇ソロに作風が近い。
だが、al.ni.co、上杉昇ソロと決定的に違うのは柴崎浩が作曲&編曲をこなすということだろう。
al.ni.coでは柴崎さんは上杉昇というボーカリストを補佐する側に回り作曲はほぼ担当せず、編曲家&ギタリストとして活躍していたが、柴崎さんの根本であるAORな趣向といい、今までのWANDSでの活躍といい、一つの音楽ジャンルを追求する人というより幅広いジャンルに対応するギタリストだし、時には柴崎さんなりのグランジ・オルタナ像に上杉さんが詞と歌を乗せる、そういう作り方をしたら上杉昇&柴崎浩はもっといい方向に進んだのかな、と思ったりする。
そういう意味では確かに「第二期WANDSの最後を飾る壊滅的ナンバー(『BEST OF BEST』)」だったのかも。
02 Blind To My Heart
作詞作曲を上杉さんが担当。上杉さん単独の作曲は「Keep My Rock'n Road」以来である。編曲はA面と同じく柴崎浩。
内省的でダークな歌詞に重く気だるい曲調で、自伝では「カップリング曲の方が重要だった」と記述されており、思いのこもった1曲とのこと。
両A面仕様ながら、アルバム未収録のままだが、もしかしたら存在を匂わせていた2期による次回作に収録される予定だったのだろうか。
A面以上に自虐的な歌詞で「墜ちていけばいい 笑みを含む心のままで」だとか「何もみたくない 僕は永久に傷を負わない」と苦悩の果てのような、ただひたすらに疲憊したような虚無な境地の歌詞は聴いていてドッシリと心にくる。
ギターも感情が消えたようなドっとするリフを奏でているが、A面と同様、リフに重ねてアコギが鳴っているのは上杉さんによるアイデアが活かされているのかも。
キーボードはA面以上に存在が・・・。やりようによってはキーボードで暗い感じの味付けができそうな気もするんだが、そういうわけにもいかなかったのか。
編曲は柴崎さんが担当しているが、この頃の柴崎さんって木村キーボードの存在をどう感じていたのだろうか。活かす方法を考えていたのか、柴崎さん自身もグランジやオルタナな生音にこだわっていてキーボードは・・・って感じだったのか。
メロディに関しては元ネタとしていたのか、偶然似たのかは不明だが、Stone Temple Pilots の「Plush」だと思う。こちらの方が4年早いリリース。特にAメロやギターリフが似ている。
Stone Temple Pilots - Plush (Official Music Video) - YouTube
歌いやすいメロディーを残しつつヘヴィな感じの楽曲はA面同様にal.ni.coというより上杉昇ソロに作風が近い。
もし、WANDS2期で5thアルバムを出していたら、al.ni.coのようなヘヴィさを追求したのか、ある程度、歌メロのあるヘヴィな曲で固める結果となったのか、その点は気になるところ。